こちかぜ文庫
中嶌みさと

日記新刊プロローグ

 中等部のまでの私は、周囲の人間にはあまり関心がなかった。
 趣味といえばコンパクトカメラで人間以外のものを撮ることだった。空や雲、街の風景、小鳥や野良猫などの動物、道ばたに咲く草花、それに留まる昆虫……そんな写真を撮ることが趣味で、そこが小さな自分の世界だった。
 あの日……高等部へ進学する前の春休みも、私はいつものように河原で写真を撮っていた。
 
 
「あら? あなたもカメラ撮影?」
 その声に驚いたように、蝶は飛び立ってしまった。私は、河原の花に留まる蝶をみつけ、今にもシャッターを切ろうとしていたのだった。
 私は小さな自分の世界が壊されたような気がした。
「あ〜ぁ〜」
 私は相当不快そうな声を上げたのだろう。その声の主は申し訳なさそうに頭を下げた。
「ご、ごめんなさい。邪魔しちゃったみたいね」
「……いいえ」
 私は、その人が顔を上げる前にそう答えた。
「お詫びといっては何なんだけど、一緒に写真を撮らない? 私も写真撮影をしているところなのよ」
「あの……私は風景写真を撮ってるだけで、人物写真はあんまり……」
「ええ、わかっているわ。だから、一緒に写らないじゃなくて、一緒に撮らない、なのよ」
「はぁ……」
 ジーパン姿の少しラフな格好その人は、私よりもかなり大人びて見えたが、正直、迷惑な人だとしか思わなかった。
 それが、私とあの先輩との出会いだった。

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